けれどこれは、脅しでも極論でもありません。
すべて、アメリカ政府が公式に出している数字です。
20人に1人が、人生で一度は刑務所に入る社会
アメリカでは、今年生まれる子どもの20人に1人が、
人生のどこかで必ず刑務所に入ると言われています。
しかもこれは、「捕まった人」だけの話です。
実際には犯罪者のうち、捕まるのは3割程度。
全員を検挙すれば、7人に1人が刑務所に入る計算になる。
松居先生は、静かにこう問いかけます。
「刑務所を作り続ける国に、未来はあると思いますか」
少女の5人に1人が性被害に遭うという現実
さらに衝撃的なのが、性暴力の数字です。
アメリカでは、少女の5人に1人が、
人生のどこかで深刻な性的被害を受けています。
中には、家庭内──つまり父親や家族による被害も含まれます。
松居先生は、ここで「親子の絆」という言葉の
恐ろしいほどの複雑さについて語ります。
加害を受けていても、
「週末に遊びに連れて行ってくれるから、お父さんが好き」
と語る子どもがいる。
これは、子どもが弱いからではありません。
人間の愛情というものが、単純ではないからです。
法律では止められないものがある
近親相姦は、当然ながら法律で禁じられています。
しかし松居先生は言います。
「本当に人を止めるのは、法律じゃない。人間性です」
では、その「人間性」はどこで育つのか。
答えは、幼児期です。
しかも、知識やしつけではありません。
0歳児が、人間を人間にする
生まれたばかりの赤ん坊は、話すことができません。
けれどそれには、深い意味があります。
言葉の通じない存在と向き合う時間が、
私たち大人に忍耐・優しさ・共感を要求する。
生後2〜3か月、赤ん坊が初めて笑う瞬間。
その小さな笑顔を、
両親、祖父母、周囲の大人たちが一緒に見つめる。
その場に流れるのは、
何かを達成したわけでも、成功したわけでもない、
「心が一つになる時間」です。
松居先生は言います。
「子育ては、子どものためだけじゃない。
大人が人間に戻るための営みなんです」
この「人間性」を育てる時間を、
社会が奪ってしまったとき、
そのツケは必ず、犯罪や暴力という形で返ってくる。
次の記事では、日本の保育・教育制度にについてまとめます。
なぜ今、現場がここまで疲弊しているのか。
その背景にある「仕組み」の問題を、松居先生は鋭く指摘します。

