最も誤解されやすく、そして最も重要だと感じたテーマが、
むしろその逆です。
「母子家庭が問題だ」という誤った見方
社会ではよく、こんな言葉を耳にします。
- 母子家庭の子どもは問題を起こしやすい
- 父親がいないから不安定になる
- 片親だと十分な愛情を与えられない
でも松居先生は、はっきりと否定します。
「問題なのは母子家庭ではありません。
“父親が社会から消えている構造”です」
父親が「家庭にいない」ことと、
父親が「子どもの人生に関わっていない」ことは、
似ているようで、まったく違うのです。
父親が“いない”のではなく、“役割を失っている”
松居先生が問題視していたのは、
父親の存在そのものではありません。
父親が「何をしていいかわからない存在」になっている社会
これこそが、本当の問題だと語られていました。
- 子育ては母親の役割
- 父親は仕事だけしていればいい
- 家庭のことに口を出すと嫌がられる
こうした空気の中で、
父親は少しずつ家庭から居場所を失っていきます。
結果として、
「いるのに、いない存在」
になってしまうのです。
父親の不在が、子どもに与える影響
父親が子どもの人生に関わらない社会では、
子どもは「境界」を学ぶ機会を失います。
境界とは、
- していいこと・いけないこと
- 力の使い方
- 社会との距離感
特に男の子にとって、
父親は「社会との最初の接点」になります。
それが欠けたまま成長すると、
- 衝動を抑えられない
- 他者との距離がつかめない
- 怒りの出し方がわからない
という形で、
後になって表面化してくるのです。
母親が「全部背負わされる」社会
父親が役割を失うと、
その分の負担は、すべて母親にのしかかります。
- 生活を支える
- 感情を受け止める
- しつけも教育も担う
特にシングルマザーの場合、
これは努力や愛情の問題ではありません。
構造的に「無理な役割」を背負わされている
それを個人の責任にすり替えてきた社会こそ、
見直されるべきなのです。
「父親を戻す」とはどういうことか
松居先生が語っていた「父親を家庭に戻す」という言葉は、
単に家にいさせる、という意味ではありません。
父親に“役割”と“居場所”を与え直す
という意味でした。
それは家庭だけで解決できる話ではなく、
社会全体の仕組みの問題です。
次章では、
松居先生が強い危機感を抱いた「母子分離政策」、
そしてそれがなぜ「日本では絶対に起こしてはいけない」のかについて、
詳しく見ていきます。

